兎波走り

死にたくない

旅の話 0.5. NY

今年の5月から8月まで、ニューヨークでルームシェアをしていた。NYといってもブルックリン・イーストヴィレッジの友人宅にほぼ週末・3週間ほどアストリアの内訳なのでほぼ郊外ではあるけれど。

 

結果から言うと、まあまあ悲しい気持ちで帰ってきた。

 

◆とりあえずルームシェア相手が面倒な人だった。

そもそもアメリカ版5chメルカリみたいな位置付けのCraigslistの募集に引っかかったのが馬鹿だったし、この1点だけで私を切り捨てる批判は十分可能だがその批判、強い言葉を他者に使うオナニーしたいだけではないですか?後述の経験により私は他人を使った自慰行為にかなり厳しくなっている。それじゃあいかれたシェアメイトを紹介するぜ。

 

シェアメイト:
・62歳、ワシントン出身、トランプに投票している
・父親がCIA勤務だったのが自慢、見てほら本に写真が載ってるのよ
・元女優、出演作は昼のソープオペラ1本のみ
・日本人の恋人がいたこともあるのうふふ
・映画などに出てくるオークに体型が酷似している

 

保守系白人おばさんで、彼女は私に「フレンドリー」にして「あげた」らしいのだが

 

・毎日その日どうだったか聞かれ
・飼い猫たんど〜こだ♩みたいなベッドに猫が寝てる写真を毎日送りつけられ(これは4日間無視して週末公園に行く誘いも寝て断ったら終わった)
・英語を嬉々として直され (childishとchildlikeを私は一生使えないかもしれないあのニヤニヤ顔と汚い部屋がフラッシュバックするから)
・私は1ヶ月に1回しか髪洗わないけどなんで毎日髪の毛洗うの?と無邪気に聞かれ(さすがにethnocentrismってスペルできる?と聞こうかと思ったがGood questionだねうける〜と死ぬほどバカ笑いしてキャンセルした)
・家賃受領メールをcontractだと言い張り紙の契約書へのサインを頑なに拒み
・私の人生選択を詳細に聞きアドバイスという名のオナニーを24時〜26時まで連日行い
・「わたし夜は冷房使わないの」と嘘をついてドアを閉め自分だけ使い(railroad apartmentという部屋が1本道になってる家だったので死ぬかと思った)
・毎晩3時までBBCのシャーロック・007・白黒のフランス映画を大音量で見て(イヤホンはbluetoothが壊れたから3日でしてくれなくなった、カナル型のは耳が痛くなるからァ〜。とのこと)
・私のゴミ箱を毎日チェックしいちゃもんをつけ
・絶対3ヶ月以上掃除してない部屋(1週間目で鼻水が止まらなくなった)なのに先週掃除したと言い張り
・会話を避けてたらあなたには私へのリスペクトが足りないわと詰り
・挙句台所を使うなら追加で$300もらうと宣言してくる

 

そんな白人優越主義というか「劣った有色人種にナイスに接して色々教えてあげる文化的に高い水準にある私」という大きな教育的・文化的な問題を体現した人だった。(彼女はカレッジ中退) 観たことないので想像で言うけど私いまドライビングミスデイジーとか観たらPTSDで死んじゃうんじゃないかな。

 

私は既に前金で家賃1か月分をデポジットとして払っていたし内鍵のついた家なので機嫌を損ねて締め出されるとアウトだし、彼女の 

・昔芸能をかじっていた
・諸外国の文化に関心がある私
・いまはライターをやってる、のが心の支え

・定職についたことはない
・フランス語もしゃべれるのようふふ(フランスに行ったことはない)

みたいな全てが、どこかパラレルワールドにおける自分の末路のように、どこか無残に思えてしまって、一言も彼女に言えることがないまま3ヶ月と1週間目で彼女の留守にUberを呼んで夜逃げをした。最後慌てすぎて鞄を1つ忘れ、窓から家に入るのを手伝ってくれたインド系ドライバーのDavidほんとにありがとう。人って踵持ったら持ち上がるんだな。

 

そもここまで失礼な人に当たったことがなく驚いてかなり処理落ちしていたし、頭と時間を彼女に使うのが面倒で何も言わなかったのだが、自分の健康のために言い返せばよかったのかもしれない。毎日リスクと天秤にかけていたがに答えが出せないままだった。今でもにふとした瞬間、頭の中であの時彼女に言えなかった言葉を言い返す自分がいてかなり嫌なので次回に活かしたい。(活かしたくないよ)

 

ちなみに家を出て転がり込んだのは友達とやってた麻雀で知り合った日本人のシェアハウスで、やっと平安を得られたが、ここでも冷房が半分壊れていたのは流石に笑った。まさか「おばさんデカすぎるから毎日 ”クマ 殺し方” でググってるんすよ」というエピソードトークで次の部屋が見つかるとは…

今だに街で太った白人を見ると彼女の怒鳴り声を思い出し体がすくむし、映画『Joker』の冒頭でぶっ殺されるサラリーマンのノリはかなり彼女に酷似していたのであのシーンだけで2時間やってほしいと心から思っている。

f:id:hellmotel:20191209181509j:plain唯一あったシェアメイトの写真。これは私が内鍵を勝手に閉めそうだから、とのことで外してくださっている所。お前は世界中のブロンドジョークを一人で生成しているんか…?彼女はハリーポッターに出てくるネズミマンに少し似ていた。他人を外見で判断するのはよくない、という私の信条を揺るがされる経験となりました。

 

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(左) 夜逃げ当日のUberを待っているとき 難民である

(右) 2週間後、そこには元気な彼女の姿が!

 

 

◆そんな最悪おうち体験をしつつNYで見たものは

 ・そこかしこにあるヨーロッパになりたい!という模倣だったり
・自国の歴史がなく各国から金あるいは軍事力により収集され崇められている遺物だったり
・移民の持ち寄った「文化」をつまみ食いしてわかった口を聞く評論家たち

だったりして私が昔憧れていた国浅すぎる…となり、母に「ここには文化がない」とハドソン川沿いで泣きながら電話をしてしまった。レディバードは文化のあるところへ行きたいと言って田舎からNYへ進学するわけだけど、まさか逆レディ・バードをやる羽目になるとはね。

 

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繰り返して書くがこれは個人の感想で、10〜30代アート/広告系かつLGBTと有色人種多めのコミュニティに一番多く接していた人間の見たものだし、お金があればあるほど幸せや安全、付き合う人間がよくなると思うのでかなりそこは意識してほしい。(何かへの保険)

 

でもまじでなんでそんなにヨーロッパのふりするの?堂々と短パンにパーカーでポテチ食べてでっけえ車乗っておけよ。無理して柱にレリーフ彫るな、カーテン生地も南部で作っとけイタリアから輸入すんな。な〜にが It is a clicheでcri de coeur of Jazz じゃフランス語使えばお洒落で知的になると思いやがって(同じ理由で第二外国語を選んだ後悔が多分に含まれる)お前らはな、移民が持ってる文化の残り香を集めて作ったポットでキマって人のもん綺麗に並べ替えてるだけやぞ…みたいなことしか思えずかなり悲しい3ヶ月を過ごした。家にも外にも救いがないってどういうことだよ。

 

最後に行った先住民博物館では急に来た粗野な白人が彼らの礼儀もなにもかも無視して略奪の限りを尽くしている展示へ感情移入してしまい2階のトイレで号泣してしまった。美術の教科書で見たみたいな、白い光のバスルームだった。

 

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ニューヨーク編 CLEAR !
【RESULT】
Experience... A
Damage... S
Money... -S
New Item... iPhone XS! (到着1週間で携帯をゴミ箱に捨てた)

 

そんなこんなでお金で歴史は買えないということを心で理解した私はやっぱり文化や!となり、中国へ向かうこととなる。

 

小さい頃行って楽しかった香港、そして今も生きる象形文字トンパ文字が使われる村を見に中国雲南省行きのチケットを取るが、そこはオーウェルの小説『1984年』の世界だった。

 


旅行の話 1.ワクワク監視カメラランド中国へ に続く

 

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ずっと海に行ってた