兎波走り

死にたくない

食の話6. おまんじゅうで動くゴーレム

昨日30日の23:30から今日31日の朝7:00まで続いた忘年会の果て、たばこ臭い新橋を離れて渋谷で9時のバスを待っていた。

予約していたお正月用の和菓子を受け取るためである。

 

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いわゆるロングスリーパーなのか、睡眠は9時間〜7時間必要でそれを下回ると人間性にかなり影響が出る。徹夜も嫌いなものランキング3位以内には入っている。本当に死にそうになるし暗いことしか考えられなくなるから。その割に夜更かしをしてしまいやすく、最近変な時間に寝てしまうためこのところ思考が堂々巡りになっており、死にやすい脳細胞をしているなあと実感している。(2019年はしないことをたくさんしてみようという裏テーマがあったので後悔はしていない)空腹でも本当に性格が変わったくらいになってしまうのでこの時の私は中ボスくらいのアンデッドだったはずだ。

 

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まぶち

 

徹夜に加えて年末のカラオケで5000円取られたこともあり、体温は低下し顔色は白くかなり三途の川に片足突っ込んでいる状態で渋谷マークシティのカフェに入った。(VIRONは味の割に高いし遠いのでやめておいた) 明らかに子供なし、恋人気分が続いているらしい壮年夫婦の朝食を横目で見つつ(ルッキズムに反対する立場としてはおっさんおばさんのあーんぱくを許さなければならない。人は理性で動くが故に人だ。こう言い聞かせたがその朝私は20秒だけ獣になっていた)やっと追えたツイッターのTLで高島屋の和菓子バイヤーさん「末富の花びら餅入荷しました」を発見してしまった。

 

入荷先の新宿高島屋は10時開店、これから伺う和菓子屋さんから代々木八幡まで徒歩20分ちょいで着くとするとかなり完璧に買える。なによりその和菓子屋さんでは花びら餅を頼んでいなかった。

 

 

これは2019年の結論だが、死の淵にあっても「おいしい」のためなら全然動ける。

 


◆どの駅からも遠い和菓子屋 

今年頂いた和菓子がとてもおいしかった。

 

1回目 お茶の席で頂いてなんとなくおいしいなと思い記憶に残っていた。お茶の席、絶対お抹茶と一緒にお菓子食べたいんだけどそれは許されないらしい。
お店の名前を調べると栗蒸し羊羹がかなり有名だったしなんか本も出されてる。いくっきゃNightじゃん。

 

2回目 渋谷から松濤を抜け徒歩で向かう。遠い。17:15に到着したところ、店が閉まっていた。Googlemapには18時までと書いてあったのだが、この感じの和菓子屋さんで珍しいなとは思ったよ。覚悟を試されている。しょんぼり帰る。

 

3回目 調べまくったところ伊勢丹のお菓子コーナーに金曜日だけ入荷されているらしいので向かう。柿モチーフのものがあったので頂く。枯れる…露…枯露柿(干し柿のことをこう呼ぶ)っていうのか〜なんか茶色っぽいし渋いっすねえ…ませっかく来たしとりあえず買いますいただきまーす

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いや!!なんだ?なにこれ???おいしあーーーーーーさらっとはいっていく1個2個もう終わり???!?
家族のために残しておこうと思ったが止まらなくて気づいたら3個全部なくなっていた。狐に化かされたんかってくらいしゅっ!と無くなった。

 

みなもとたろう先生の漫画で、京都の上等なお豆腐を何丁ももらってきてしまって(鍋に山盛りのお豆腐の絵)、家族で困りながら食べたら全部食べきれてしまった、本当に上等なものとはかくのごときか(家族4人ぽかんとしてる絵)というシーンだけかなり覚えているんですが、これに似ているのかもしれない。


私は関西出身でもないし和菓子をそこまで食べたことがないけど(何かへの予防線)餡の香りからして違う気がする。香り高いとはいえよくある豆!ごろごろ!系の野趣あふれるおはぎみたいな感じとも違う。周りのお餅もおいしい。さらっとした粉がついていて香りは控えめでお餅感もそこまで強くなく、あれは求肥だったのだろうか。美味しくて検分する余裕がなかった。そして食べながら「上品」ってこういうことですか?と貴族の館にケータリングで来たバイトの新人みたいな気持ちになってしまった。自分が決して知り得なかった膨大なコンテクストへの驚きと感動とそれを生まれた時から享受している人がいることを知ったと同時に自分はそうでないと知る一抹の悲しさです。出自に欠けてる文化資本をお金で補いたい。(成金の思想) しかし成金ですらない私にできることは細々と買い支えることだけである。いままで何かのオタクになれたことは一度もないけど、推しに課金ってこういうことでしょうか。やっと友達に胸張って言えるよ、推しはおいしいものです。


・4回目 やっと店舗へ伺えた。東大経由ルートを試そうとしたが井の頭線が止まっていたことでお店の近くまで行くバスを発見できた。これは大ファインプレーである。*交通については最後にまとめておく。
13:50の時点でもう生菓子が残り3つしかなかった。かっこいい…。すみません全部買いました。蕎麦饅頭2個とこれなんだっけ?うぐいす餅?にしては早い?いやうぐいす餅だよな…すみません初めて伺えたのでテンション上がって失念してしまったが2種類頂きましてお正月のお菓子の予約もできた。

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ただこの2つのお菓子、最初の柿のやつの感動がすごかったのかんん?と思いながら食べてしまった。この日はかなりバタバタしていたので味を感じる余裕がなかったのかもしれない。忙しい時に美術館行っても全然集中できないの法則が働いている可能性はあります。

 

・5回目 やっと今日。9:07にお伺いして受け取ってきました。冬と朝の光がかなり好きなのでたくさん写真を撮った。

 

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帰りは代々木八幡まで歩き新宿へ。9:45の時点で高島屋にかなり並んでいた。年末を横目に花びら餅を購入しミッションコンプリート。ちなみに真後ろに並んでいた女性がかなりのアニメ声で最初パパ活の朝活かと思った。「ひと、がたくさん、だぁ〜」「もぉ列はいっぱい、ですよぉ」「横入りだよぉ(列形成の係員さんがいないため後から来た人が先に並ぶみたいになってしまってた)」と聞こえよがしにお連れの男性に言っており、振り向いたら普通に40台くらいのご夫婦だった。並んでいたので逃げられないしなんでこんなに試されないといけないん?とairpodの遮音性能の低さを呪っていたら全然私を抜かして花びら餅2箱買ってた。いやそれでdポイントカード使いなの要素多すぎるよ。

そんなこんなでやっと手に入れたお正月菓子、明日開けちゃうまで階段で保存するもんね〜

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末富さんの包装紙を見ると、仁左衛門さんが冨樫を演じた時なんて綺麗な空色だろうと思ったことをたまに思い出す。多分少し違うのだろうけど、どちらも気持ちのいい色、という記憶の箱にしまってある。

 

◆お正月の記憶の話

今年の最後にご飯の記事を書けて嬉しい。本当はもっとたくさん書きたいお店があるが、ご飯の記事はなぜかたくさんさくっと書けない。

 

高校生くらいまで、夏休みとお正月は父の大阪の実家で毎年過ごしていた。
祖母が必ずお正月用の生菓子と箱に入った切り餅を用意してくれていて、どちらも私の好物だった。それらはひんやりとした階段の踊り場に置かれており、好きな時にお餅を好きなだけ取りに行ってトースターで焼いては食べていた。いまでもお正月菓子や海老・よもぎ・豆の切り餅を見ると、ひんやりとした階段、お玄関にいつも活けてあった水仙の香り、祖母の「おはようさん」の声を思い出す。花びら餅のごぼう、小さい頃はかなり嫌いだったのに今日は勇んで買ってきてしまった。

 

最近よく、子供の頃の生育環境が及ぼす影響は怖いほど大きいなと思う。その人が意識しているにせよしていないにせよ、それは変わらずある。なんだか上野千鶴子の入学スピーチ*1 みたいな話になってしまいそうになるのでやめておくが。(マシュマロテストも気が滅入る再現失敗*2 が出てしまった) ただ、三つ子の魂百までとは本当によく言ったものだなあと思いながら、今日のお買い物でも小さい頃の”お正月"を再現しようとしてしまっている。でもハムのプレートは意味不明だったので不採用です。


何軒かしか書けなかったけれど2019年はこんなポストを読んでくださり本当にありがとうございます。2020年も、どんなに死んでいてもおいしいで動けるように励んで参りたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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晦日、月が綺麗ですね。

 

 

 

 

◆交通 

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●東急バス渋55系統 渋谷駅~幡ヶ谷折返所
マークシティからモヤイ像側に渡ってすぐ右手のバス停
・「二ツ橋」で下車、お店まで徒歩3分もないくらい
・唯一の問題は30分に1本しかないこと

●試していないのだが、電車のみならたぶん駒場東大前駅下車で東大をつっきるのが早い
代々木八幡駅からは上り坂になるのでおすすめしない。


*注釈

*1 上野千鶴子の入学スピーチ

www.u-tokyo.ac.jp

*2 マシュマロテストも気が滅入る再現失敗...(GIGAZINEですが)

gigazine.net